放射線生物学 – 確率的影響と確定的影響

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この記事では放射線生物学で最も出題されやすい内容の一つである、放射線の確率的影響と確定的影響について解説していきます。放射線生物学は化学・生物・薬学区分の一次試験の、「細胞生物学・放射線生物学」の科目で出題されます。確率的影響と確定的影響の内容は2-3年に一度のペースで出題されているので、確実に得点できるようにしっかりとその違いと特徴を確認しておきましょう。

確率的影響と確定的影響

放射線影響は様々な視点から分類されますが、確率的影響と確定的影響は、被ばく線量と影響の発生頻度に着目した分類になります。

確率的影響

確率的影響の特徴は放射線の線量の増加とともにその疾患が生じる頻度(確率)が上昇しているというところです。確率的影響は突然変異に基づく影響であり、その代表例として、がんや遺伝性影響が挙げられます。また、確率的影響においてその重症度は一定です。これは、小線量被曝や、大線量被曝に関わらずひとたびがんになり死亡すればば、その「がんになり死亡した」という重症度は変わらないことから確認できます。

遺伝性影響 : 被曝した親の遺伝的リスクがその子や孫に受け継がれ影響が表れること

確定的影響

確定的影響は、ある一定の線量(しきい線量)以上の被曝をすると現れてくる影響のことを言います。ICRP (2007勧告)では、しきい線量は被ばくした人の1%に影響が表れる線量と定義されています。確率的影響は組織、臓器の細胞の細胞死に基づくものであり、組織・臓器のある一定以上の細胞が死ぬと正常な機能を維持できなくなり徐々に影響が表れ始めます。線量の増加とともに細胞死は増加し、それに伴って臓器などの機能不全が亢進し重篤度が増すことは容易に想像がつきますね。確定的影響には脱毛、白内障、白血球減少など確率的影響を除くすべての影響が含まれます。

まとめ

・確率的影響にはしきい値がなく、確定的影響にはしきい値があるとされている。

・確率的影響では放射線の線量の増加とともにその疾患が生じる頻度(確率)が上昇する。重症度は一定である。

・確定的影響は、ある一定の線量(しきい線量)以上の被曝をすると現れ始め、線量の増加とともに重篤度は増加する。

参考文献

杉浦紳之,鈴木崇彦,山西弘城,「放射線生物学 (5訂版)」,p18~20,通商産業研究社,(2017)

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