放射線生物学 – 放射線の基礎

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この記事では放射線の基礎についてまとめています。これから放射線生物学を学ぶ上で重要内容であり、試験にもよく出題されてくる内容になっています。

放射線の種類と性質

放射線はエネルギーの運び手であり、電離や励起を引き起こします。この性質が、放射線が生物に対して作用する理由です。放射線生物学で取り上げられるのは紫外線と電離放射線であり、一般に「放射線」といえば電離放射線のことを指します。

電離放射線は電磁波(光子)と粒子線に分けられます。電離作用を有する電磁波は、波長がごく短い光であり、γ線とX線がそれに該当します。γ線は励起状態の原子核から放出されるものであり、X線は電子の運動に伴って発生する光子です。

粒子線にはα線、β線、陽子などの電荷をもった荷電粒子、電荷をもたない非荷電粒子があります。β線の本体は電子であるが、原子核から放出される電子をβ線と呼び、原子核外の電子と区別しています。中性子線は自ら電荷をもっていないが、他の原子に作用することでγ線や荷電粒子を放出させることができます。

放射線の性質

励起と電離

原子の中心には正電荷を持つ原子核があり、その周辺を電子が飛び回っている。原子核の構成要素である陽子は電荷をもち、中性子は電気的に中性であり、原子核に存在する陽子の数が原子番号に相当します。通常のイオン化していない原子では原子番号(陽子)の数と同数の電子が原子核の周りを飛び回っています。電子の軌道は量子力学的な制約のため決まった状態しか取れず、その軌道は原子核に近い順にK、L、M殻とよばれ、K殻の電子が最も強く束縛されます。K殻から順序良く電子が詰まった状態を基底状態と呼びます。

励起は、軌道電子にエネルギーが与えられ外側の電子軌道に飛び移る現象であり、励起状態は不安定であり電子はレベルの低い軌道に戻ろうとします。

電離は軌道電子が原子核の束縛からはなれて自由電子になる現象です。電離は束縛のエネルギー以上のエネルギーが電子に与えられて生じ、そのエネルギーは励起の際より大きく、電離の結果原子は電子が不足し陽イオンとなります。

放射線のエネルギー

放射線生物学でよく用いられるエネルギー単位が、eV(electron volt : 電子ボルト)です。これにM(メガ)やK(キロ)がつけられ、MeV(メブ)、KeV(ケブ)Vと呼びます。電子一個が持つ電は-1.6×10^-19C(クーロン)で、これが電位 0V から電位 +1V まで加速されることによって得た運動エネルギーが、1eVです。

ジュールで表すと、1eV = 1.6 x 10^-19C x 1V = 1.6 x 10^-19Jとなります。

細かい定義はいいので、エネルギーの単位がeVであることを覚えておいてください。

また、電磁波のエネルギー E はプランク定数をhとして、

E = hν = hc / λ (ν: 電磁波の振動数 c: 電磁波の速度 λ: 電磁波の波長)

と表されます。すなわち、波長が短い(振動数が大きい)電磁波ほど大きなエネルギーを持つことになります。紫外線は、可視光より波長が短く大きなエネルギーを持っているため励起作用を示し、日焼けや殺菌効果をもっています。

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参考文献

杉浦紳之,鈴木崇彦,山西弘城,「放射線生物学 (5訂版)」,p9~11,通商産業研究社,(2017)

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