この記事では国家総合職の二次試験の遺伝学に頻出のテーマである染色体異常の異数性について解説します。実際にH22年度試験、H31年度試験において染色体の異数性のテーマで出題があります。
染色体の数的変異
染色体の数的変異は倍数性と異数性に分けることができる。倍数性は配偶子に含まれる染色体セット(n)の正確な倍数的変異であり、半倍体、一倍体、二倍体、三倍体と表記される。異数性は体細胞での染色体数(2n)が種に特異的な正常数に比べ1ないしは数個多いか少ない状態を指す。
倍数性についての記事はこちらから
※厳密にはnは配偶子の染色体数、2nは接合体の染色体数を意味し、正常の二倍体の配偶子に含まれる染色体の数を基本数xで示す。例えばヒトの場合、2n=2x=46となり、ターナー症候群のように染色体数が1本少ない場合は、2n=2x-1=45と表される。
異数性
倍数性のようにゲノム単位の染色体数の変化ではなく、個々の染色体の増減に関わる変異を異数性と呼ぶ。相同染色体の両方が欠けている場合を零染色体性、片方が欠けている場合を一染色体性、2本ともそろっている状態を二染色体性、一本過剰となっている状態を三染色体性と呼ぶ。
・三染色体性(トリソミー)
相同染色体が1本過剰、つまり3本存在している状態のこと。その染色体に存在する遺伝子の効果が過剰に表れることがある。植物は染色体数の変化には比較的耐性であり、トマトなどで三染色体シリーズが作出されている。
しかし動物においてはその影響は顕著で、有名なものに21番染色体トリソミーによって引き起こされるダウン症がある。21番染色体トリソミーは、出生時では最も頻度の高い染色体異常であり、その出現頻度は母体の年齢に強く創刊している。満期まで生存できる常染色体トリソミーは21番染色体のほかに、13番と18番しかない。
性染色体のトリソミーではXXX,XXY,XYYの三種類がしばしばみられる(クラインフェルター症候群)。この変異はすべてのトリソミーのうち最も症状が少ない。
・一染色体性(モノソミー)
正常より1本少ない染色体数をもつような変異のこと。染色体の種類にもよるが片方の染色体を失うことは生物にとってかなり致命的であり、その出現頻度は低く、植物でもごく一部の種と特定の染色体に限られている。
ヒトにおいて基本的にはモノソミーの胚は発達できないため、常染色体モノソミーは出生児にはみられない。生存可能なモノソミーは45,X(X染色体を1つだけ持つ)だけであり、これはターナー症候群を引き起こす。
参考文献
中村千春,「基礎生物学テキストシリーズ1 遺伝学」,p66~68,東京化学同人,(2013)
福井次矢,黒川清(監訳),「ハリソン内科学 第3版」,p426,メディカル・サイエンス・インターナショナル,(2009)
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