この記事では科学警察研究所の概要を解説します。
科学警察研究所(科警研)は警察庁の付属機関であり、国家総合職の中でも数少ない研究をメインにした官庁です。よく似たものに科学捜査研究所(科捜研)がありますが、科捜研は各都道府県警所属の機関です。科学捜査に関した業務内容という点では同じですが、科警研ではより高度な鑑定、研究を行っています。
科警研には6つの研究部があり、合計24研究室が存在しておりそれぞれの専門性を活かし、科学捜査、犯罪防止、交通事故防止などに関した業務を行っています。
各研究部について
法科学第一部には5つの生物系研究室があり、遺留品のDNA鑑定や、バイオテロ対策についての研究、鑑定を行っています。
事件現場や事故現場に残された被害者や被疑者の生体サンプル(血液や毛髪、体液など)は犯人の特定など個人の識別に有用であり、重要な証拠資料になります。
PCRを用いたDNA鑑定や、毛髪の形態学的検査、顔画像解析などの研究、鑑定が行わてれいます。
また、バイオテロに用いられる可能性のある細菌やウイルス、細菌毒素の検出に関わる研究もおこなわれています。
法科学第二部
法科学第二部には4つの工学系の研究室があり、火災や爆発、銃器などの研究、鑑定が行われています。
大規模な建物火災や、工場での爆発事故のニュースをしばしば見かけますが、そのような事故は大きな被害を与えるため問題になります。
法科学第二部ではこのような事案に関して、事故原因の解明、爆発物の種類や威力の研究、鑑定を行っています。
また、密造銃や改造銃の能力分析、鑑定能力の向上のための研究もおこなわれています。
法科学第三部には4つの研究室があり、麻薬や毒物などの化学物質の分析、研究が行われています。
私たちの身の回りには、麻薬や毒物はもちろん農薬や、天然毒、家庭用化学製品など一歩間違えたら健康被害が生じる危険のある化学物質がたくさんあります。そのような化学物質の検出や分析手法に関した研究やそれを応用した鑑定が行われています。
また犯罪現場に残された遺留品の化学的な分析や、化学テロにおける化学剤の検出・分析手法などの研究も行っています。
法科学第四部
法科学第四部には3つの研究室があり、ポリグラフ検査や声紋、筆跡鑑定など心理学、情報科学に関した研究、鑑定が行われています。
ポリグラフ検査とは、いわゆる「うそ発見」に関した検査で、被疑者の血圧や血流量などの生理学的な変化を測定し判定を下します。
文書鑑定においては筆跡鑑定をはじめ、印刷物の鑑定、偽造パスポートや偽造紙幣・通貨の鑑定などが行われています。
犯罪行動科学部
犯罪行動科学部には3つの研究室があり、少年犯罪や、犯罪予防、犯罪捜査支援に関した研究を行っています。
少年研究室では、少年による非行の原因、更生、予防に関した調査や研究が行われています。また、近年では児童が被害者になることも多く、被害児童から正確な情報を聞き出す手法についての研究もおこなわれています。
犯罪予防に関しては過去の事件の犯罪者や被害者、社会的要因を分析することにより、犯罪を未然に防ぐための研究が行われています。
犯罪捜査支援では、心理学や行動科学を応用した、被害者や被疑者との面接技術向上のための研究を行っています。
交通科学部
交通科学部では3つの研究室があり、その名の通り交通科学に関した研究・鑑定が行われています。
交通渋滞、悪天候による運転への影響、高齢者の交通事故予防、交通事故分析などに関した研究が行われています。
採用について
科警研に採用されるには国家総合職試験に合格し、官庁訪問を経て内定を得る必要があります。
また、科警研の各研究室の人員募集は、欠員が出た年にのみ行われます。
つまり、毎年すべての研究室が人員募集をしているわけではなく、自分が受験する年に希望の研究室が募集をかけていない場合があります。そのため志望にあたっては複数の研究室を調べいくつか候補を挙げておく必要があります。
各研究室ごとに募集試験区分が違い、募集があった場合も基本的に採用人数は1名のため採用難易度はかなり高いです。自分の行きたい研究室の募集情報を確認し、専門性、人物面の充実を図りしっかりと対策を練って官庁訪問に臨みたいですね。
また、採用には学歴(学校歴ではなく学位)関係なく採用されるということですが例年院卒者が多いようです。単純に能力の差かもしれません。
ちなみに科警研に採用後は、科警研に所属しつつ大学院博士課程の取得することも可能です。千葉県柏市の科学警察研究所のすぐ近くには東京大学柏キャンパスがあったりします。給料をもらいながら国費で大学院に通い、キャリアアップさせてもらえる点も魅力的なポイントです。もちろん仕事と大学院での研究を並行させる必要があるのでそれなりに大変ですが。
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