官庁訪問 内容と対策

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筆記試験に最終合格すると、各省庁に出向いて採用面接を受けることが出来ます。この採用面接が官庁訪問です。官庁訪問では内定まで通常10回を超えるほど多くの面接試験があるなど、民間企業の採用面接とは違った側面も多くあります。

私は2019年度と2021年度の合格の際、化学・生物・薬学区分合格者として、厚生労働省(薬系技官)、科学警察研究所(生物学第五研究室)、防衛装備庁、特許庁の官庁訪問に行った経験があります。この経験をもとに国家総合職の官庁訪問で実際に行われることと、その対策について解説します。化生薬区分受験者や理系区分の方は参考になると思います。

※新型コロナウイルスの影響でスケジュールは流動的になっている場合があります。

化学・生物・薬学区分の採用官庁に関する記事はこちら

官庁訪問は「採用の場」と「各官庁の紹介・アピールの場」という二つの側面があるため、そこまで気張っていく必要もありません。国家運営の心臓部である中央省庁の職員と対等に話せたり、実際に職場をのぞいてみたりできる貴重な機会です。入省しない限りこんなチャンスは今後の人生で二度とないかもしれません。最終合格した暁には積極的に官庁訪問してみましょう。出口面接などで人事からフィードバックももらえ、今後の活動にもいかせると思います。

官庁訪問 ~全体の流れ~

官庁訪問は二次試験合格者を対象とし、6月下旬から7月上旬にかけて計2週間の日程で行われます。二次試験の合格発表が6月25日前後にあり、その2日後くらいから官庁訪問のスケジュールが始まりまるため、すぐに準備しなければいけません。私が学部生のころの官庁訪問は合格発表の次の日から官庁訪問だったため、地方住みだった私はネットで合格を知り、合格通知書類が届く前にその日のうちに東京に移動したりしていました笑。

官庁訪問 全体の流れ

官庁訪問は2週間を5クールに分けて行われています。「クール」とは民間でいう1次面接~5次面接みたいな感じです。官庁訪問では民間企業の採用面接とは違い、一日に何度も面接を受けることになります。基本的に訪問する官庁は予約制となっています。

通常、第一クール、第二クールでは4~5回、人によってはそれ以上の面接が行われます。またグループディスカッションが課せられる官庁もあります。グループディスカッションが行われる官庁は大体決まっているのでOB・OGや学校の公務員担当講師に聞いたら情報を得られるかもしれません。ちなみに私は厚生労働省(薬系技官)、特許庁でグループディスカッションを経験しました(コロナ禍以前の官庁訪問)。

第三クールまで駒を進めるとかなり訪問者の数も絞られてきて、採用枠にもよりますが応募者の4割から2割くらいになっていると思います。第三クールまで来れたらそれなりに評価してもらっているということでありもうひと踏ん張りです。ここまでくると一日の面接会数は減り、各省庁やそれぞれの部局のかなり偉い人と面接することとなります。

第四クールでは実質的な最終面接が行われる官庁が多いと思います。内定をもらった場合の入省の本気度なども聞かれます。

第五クールに進むことが出来れば、それはほぼ「内定」を意味します。通常、第五クールは、正午の内定解禁まで待機し、正午になれば各省庁で一斉に直接内々定が言い渡されます。

学校歴や学閥などは採用に関係あるのか? – 基本的には関係ありません。とくに理系職種の場合は人物本位で選考が行われます。実際、自分が官庁訪問した官庁では学校歴による有利不利を感じた場面はありません。

 



官庁訪問 ~1日の流れ~

官庁訪問 一日の流れ (対面の第一・第二クールのイメージ)

新型コロナの影響で今はオンラインでの面接が主流になっています。特に一次面接や、地方の学生に対しては原則オンラインで行うことが人事院から通達されています。オンラインであっても上記図の流れで進んでいくことが多いです。以下で対面の場合とオンラインでの場合の官庁訪問について解説していきます。

オンラインの場合は指定の時刻に指定されたurlにつなぎ待機します。その後人事担当者からその日の予定などの連絡があります。基本的に面接の時間は事前に通知がありますが、オンラインの官庁訪問の面接の時間は、指定された時間にきっちりと開始される省庁や数十分遅れて始まる省庁など様々です。

対面の場合は通常、霞が関の本省に出向きます。到着すると官庁訪問対応の職員(1~3年目の若手官僚)が待機室に案内します。待機室では他の受験者と一緒に面接が開始されるのを待ちます。待機室では他の受験者の人とわいわいしゃべって情報交換できる省庁もあれば、とてもしゃべりだせるような雰囲気ではない省庁もあるなど、省庁のカラーによって様々です。対面の場合の面接開始時間は普通知らされません。いつ来るかもわからない面接をただ机にじっと座って待つのもしんどいですが、忍耐力も評価されていると思って踏ん張りましょう。この点、オンライン面接の場合は基本的に面接の開始時間が指定されるため、時間的拘束が少なく楽です。

午前の面接が終わると昼休憩になります。オンラインの場合は再集合の時間の連絡があると思います。

対面の場合は庁舎内の食堂やコンビニで昼食を取ります。

コロナ禍以前のすべて対面で行っていたころは、不合格の受験者は面接の区切りがつくと帰らされる省庁もあり、自分が面接から帰ってくると待機室の人数がごっそり減っていた、なんてこともありました。←恐怖でしかない笑

通常、一日の中でも面接の回数を重ねていくにつれ面接官の役職が上がっていきます。一回目、二回目の面接では2-5年目くらいの若手が多いですが、順調に面接をこなしていくと3回目、4回目の面接官は課長級、室長級になるなど偉い職員さんが面接官として出てきます。特に優秀だと早い段階から囲い込むために、他の受験者は会わないような偉い職員と面談する機会がある場合があります。一方、面接を重ねてもずっと若手の面接官の場合は評価が低い可能性が大きいです。

午後

午前と同じような手順で面接が再開されます。

当日の面接スケジュールをすべて消化すると出口面接が行われます。出口面接では人事担当者からその日の面接の振り返りや評価のコメントがあります。合格の場合はその場で言い渡され、次のクールの訪問日時の調整が行われます。不合格や保留の場合は「後日、電話かメールで連絡する」といわれます。後で連絡する、のパターンだと正直望みは薄いです。切り替えて別の省庁の対策をしましょう。

官庁訪問 ~面接の実際 (質問内容と対策)~

官庁訪問に際しては事前に各省庁用独自の仕様の面接カードを記入して持参します。オンラインの場合はメールで送ります。基本は面接カードをもとに面接官が事前に質問を用意していると思われます。

以下に私が実際に官庁訪問で質問された内容を列挙します。一部特定の省庁特有の質問もあるため一般化しています。

・2.3分で自己紹介

・政策の調整で他の職員と対立したらどう振舞うか

・最近の気になるニュース

・志望省庁およびその分野に興味を持った理由

・自身の研究内容について素人にもわかりやすいように紹介

・研究活動において苦労したことと、どう乗り越えたか

・研究室ではどのような役割を担っているか

・企業や他の研究グループと共同研究をした経験はあるか

・所属学部・学科を選択した理由

・自分の長所を業務にどう活かせるか

・失敗した経験、失敗したときにどう行動するか

・サークル活動について(サークル運営や、自身の役割など)

・アルバイトについて(自身の役割など)

・訪問中の官庁以外に志望している省庁がある場合はその志望理由

・自身の専攻する分野以外で興味のある分野・講義

・官庁訪問で学んだこと

・いま大学で行っている研究を続けないのか

・ジェネラリストかスペシャリストかどちらになりたいか

・官庁訪問の空き日や土日は何をしていたか

・趣味、リフレッシュの方法

・なぜ民間企業ではなくその省庁なのか(民間でも似たような職種・分野がある場合)

・他省庁および民間企業の選考状況

・志望省庁の存在意義

・英語に対して苦手意識はないか

・新しい分野について学ぶときどう対応するか

・自分の興味のある仕事ばかりではないが大丈夫か

・コロナ禍について思うこと

・(院生は)大学院進学した理由

・自分の性格に関するエピソード

・研究を行う上で注意していること

・自身の専門性と志望先の関わり

面接ではしゃべりすぎないように注意しましょう。特に官僚は秘匿性の高い情報を扱うことも多いため、聞かれていないことまで話し出すと印象が悪くなります。

ずっと緊張していたり、固くなりすぎるのもよくありません。その場の雰囲気に合わせて適切なトーンで会話しましょう。

2021年度は大学院生として官庁訪問しましたが、大学での研究についてたくさん質問を受けました。院生の場合はポテンシャルもそうですが、ある程度即戦力として見られている部分もあるので、専門性をふまえその省庁にどう活かせるか具体的に話せると高評価につながります。

一方学部生として官庁訪問した2019年度はポテンシャルの部分を見られていたと思います。基本的に人物本位で合否が決まっていくため、経験に勝る院生が残りやすく、採用実績も院生の割合が高くなりがちです。学部生時代の官庁訪問の時、ある省庁の最終面接では自分以外全員院生だったこともありました。そんな中で学部生が生き残るには、粗削りながらも伸びしろをアピールするしかありません。なので、質問に回答する際に、対応力や短期間での成長性をアピールしていくように対策を練るといいと思います。

もちろんですが、訪問予定の官庁の説明会には行き、パンフレットも一通り読んでおきましょう。一次試験合格者発表後に一次合格者を対象とした説明会がありますので必ず参加するようにしておきましょう。理解を深めるのももちろんですが、説明会に参加したことがあるかなど聞かれることがあります。また、グループディスカッションが行われる場合はその官庁に関連したテーマが出題されることが多いので、最低限パンフレットに載っている内容のことは頭に入れ、さらに最新のトピックについても押さえておくとよいでしょう。

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