2021年 国家総合職 化生薬を振り返ります

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この記事では2021年度国家公務員総合職、化学・生物・薬学区分の振り返りをしてみたいと思います。じつは私も受験してきましたので、自分の結果も一緒にお伝えしながら振り返ります。ここでは、おもに私の専門である生物系科目を中心に振りかえっていきますが、他の分野についてものちに追記していく予定です。

 



一次試験

教養試験

教養試験は数的処理が難しかった印象があります。私は自力では3問ほどしかわかりませんでした。文章理解は例年通りの難易度でした。英語では生物関連の文章が出題されましたが、普段から研究室などで論文を読んでいるような人は取り組みやすかったかと思います。知識系の問題は比較的易しかったと思います。院卒者試験の受験者の方で生物系の専攻の方は、自然科目でも生物が出題されたのでとてもラッキーでしたね。

結局教養試験は30問中14問正解でした。少なくとも半分は正解したいと思っていたので悔しい結果です。

専門多肢選択

私は専門試験は「食品学」、「生化学・分子生物学」、「応用微生物学・生物工学」、「発生生物学・生理学」、「細胞生物学・放射線生物学」をベースに対策していました。試験当日は問題を見て食品学から2問減らし、「遺伝学・進化学」から2問解きましたが正解できませんでした笑。今年の食品学は解きにくい問題が多かったと感じます。生化学や、応用微生物では調子よく正解できましたが、発生生物学・生理学、放射線生物学でほとんど点が取れなかったのは誤算でした。結局専門多肢選択では40問中21問正解でした。

結局一次試験の結果は70問中35点、正答率50%でした。大卒程度試験であれば間違いなく不合格ですね笑。今年は受験者が減った一方で、化生薬区分の院卒採用予定数が35人と比較的多かったのでボーダーは低くなっており、受かりやすくなっていると思います。(それでも50%だとぎりぎりだったと思います。)

結果、何とか一次試験は合格することができました。

 



二次試験 (専門記述)

二次試験の専門科目は「生化学」、「分子生物学・生物工学」、「細胞生物学」を解くことを想定して学習していました。試験専門委員の分析から、今年は神経(神経疾患)やそれに絡めたアミノ酸代謝、エピジェネティクス、タンパク質の転写と翻訳、糖質代謝あたりが出題される可能性が高いと考え、対策していました。私は個人的に解きやすいと感じた「分子生物学・生物工学」と「細胞生物学」を選択しました。

試験専門委員 – その年の国家公務員試験の専門試験の問題作成を行う、主に大学の教授や専門機関の職員のこと。問題作成者の専門分野の内容が出題されることが多々あり、受験生は要チェックである。毎年2月上旬に発行される官報に載っている。2021年度試験の試験専門委員に関する記事はこちら。

生化学

今年の生化学は酵素とスプライシングを中心とした遺伝子発現調節についてでしたね。大問1の酵素では、これまでのEC1~6だった酵素番号に2018年に新たに加わったEC7についての出題も見られました。大問2の遺伝子発現調節では、スプライシングの反応機構を図示しながら説明せよという出題が印象に残っています。「そこまで詳しく勉強してないよっ!」という人も多いと思いますが、今年の試験専門委員の田中聡教授(東京大)はスプライシングを研究テーマの一つとしているので、想定できた出題ではあります。対策をしっかりとしていた人は他の人と差をつけられたのではないのでしょうか。生化学全体の難易度としては例年並みだったと考えられます。

分子生物学・生物工学

分子生物学・生物工学では、ノンコーディングRNA、PCR法、顕微鏡、化学物質の分析法について出題されました。今年は時事的な内容も踏まえたのか、RT-PCRやPCRを用いたウイルスの検出についての出題がありました。生物系の人にとってはPCRは基本的な技術なので難なくこなせたのではないかと推測されます。少し難しいかなと感じたのは顕微鏡についての出題です。研究室でFITC、ローダミン、DAPIを使いようなことがない人にとっては解きにくい場面もあったと思います。顕微鏡の出題は一次試験の専門多肢でたまに出題されるので、多少勉強していた私は何とか解答できました。最後の化学物質の分析法についての出題では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と質量分析の原理を説明せよという問題でした。ちゃんと説明しようと思うと難しいと感じる人もいるかもしれませんが、2~3行で説明せよ、との指示だったのである程度解答できたという人は多かったと思います。分子生物学・生物工学の難易度も例年並みだと思います。

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細胞生物学

細胞生物学ではシグナル伝達とDNA損傷・修復についての出題でした。両方とも実験問題があり、多少時間がかかり問題量も多いと感じた人も多いのではないでしょうか。細胞生物学で印象的だったのはコレラ毒素と百日咳毒素の作用機序を説明せよという出題がありました。これは悩んだ人も多かったと思います。しかし、当ブログでおすすめ参考書としていた「医学部編入のための生命科学演習」でまったく同じ内容の問題が掲載されていたので、これをやりこんでいた人にはラッキー問題でしたね。私もしっかりと解答させていただきました笑。簡単に解答を書くと、「小腸では腸液を分泌しているが、これはGタンパク質-アデニル酸シクラーゼ系によって制御されている。コレラ毒素はGタンパク質をADP-リボシル化し、そのGTPase活性を阻害する。また、百日咳毒素はアデニル酸シクラーゼを抑制するGタンパク質を抑制する。そのため、cAMP濃度が持続的に上昇し、腸液の分泌が続き下痢をきたす。」となります。知らなければ書けませんよね、こんなこと。さらに、以前出題された「I cell disease (I cell 病)」も「医学部編入のための生命科学演習」に掲載されていることから、この問題集は受験生にとっては必携ですね。

細胞生物学の大問2のDNA損傷・修復の出題ですが、放射線生物学を勉強たことがない人にとっては、穴埋め問題は答えずらかったと思います。増殖死(分裂死)と間期死は射線生物学の教科書以外では見たことがないです。一方でDNA修復の基礎的な問題は確実に点を取っておきたいところです。

二次の専門記述は、素点40点満点中25点でした。平均が19点だったので悪くはないですが偏差値を計算してみるとそんなに高くなかったので悔しいです。

以下に私の試験成績を載せておきます。ちなみに順位は69人最終合格中の42番でした。

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