この記事では科学警察研究所(科警研)の法科学第一部の生物系の研究室について紹介します。
科警研には法科学第一部~第四部、犯罪行動科学部、交通科学部の6つの部局があり、それぞれの専門家が犯罪捜査や、その研究を行っています。
この中で法科学第一部には、生物第一研究室~第五研究室まで5つの研究室があります。
生物第一研究室
生物第一研究室では毛髪や皮膚、その他生体組織の形態検査に関する研究、鑑定を行っています。形態検査では、まず犯罪現場に残された毛髪が人毛か否かを区別し、その後形状や毛の状態などを対象毛髪と比較し評価します。
また、犯罪現場に残された組織片は時間の経過とともに、腐敗や乾燥することでその祖引き構造が崩れ、通常の検査方法が適用できない場合があります。そのような場合には、組織片の状態に合わた処理が必要になり、その検査方法の研究開発を行っています。
生物第二研究室
生物第二研究室では骨や歯、人物の顔画像に関する法科学的な研究、鑑定を行っています。主な目的は、白骨化死体や顔画像からの個人の識別であり、白骨からの性別や年齢の推定の研究を行っている。
白骨化死体の解析では、X線検査を行い生前のX線画像との比較で個人識別を行っています。
また、白骨死体の身元を明らかにするためにスーパーインポーズ法が用いられています。これは白骨死体の頭蓋骨と該当者と思われる人物の顔画像を重ね合わせることで個人識別を行う検査法で、識別の精度と迅速性の向上が図られています。
生物第三研究室
生物第三研究室では犯罪現場に残された体液種の証明や、血液型による個人識別のための生化学的研究及びその鑑定を行っています。
体液資料のRT-PCRによる分析や、DNAメチル化解析、タンパク質検出に関する基礎的な研究や、それを応用した鑑定方法の開発などが行われています。
さらには犯罪現場に残された生体資料の人獣鑑別は必要不可欠であり、ELISAやRT-PCRを活用した高精度の検査法の研究が行われています。
また、DNAチップを用いたABO遺伝子型判定法に関する研究もおこなわれています。
生物第四研究室
生物第四研究室では、犯罪現場から採取された血痕、組織などのサンプルからのDNA型分析による個人の識別法の研究開発と鑑定などを行っています。
DNA鑑定で用いる分析機器や検査キットを有効に活用するための検証や、システムの維持、開発を行っています。
また、DNA鑑定に関して各都道府県の科捜研に対する指導なども行っています。
生物第五研究室
生物第五研究室ではバイオテロに用いられる微生物や生物剤を対象とした分離同定法、検知技術の研究開発が行われています。
採用について
科警研の各研究室の人員募集は、欠員が出た年にのみ行われます。
つまり、毎年すべての研究室が人員募集をしているわけではなく、自分が受験する年に希望の研究室が募集をかけていない場合があります。そのため志望にあたっては複数の研究室を調べいくつか候補を挙げておく必要があります。
さらに募集があった場合も基本的に採用人数は1名のため採用難易度はかなり高いです。専門性、人物面の充実を図りしっかりと対策を練って官庁訪問に臨みたいですね。
また、採用には学歴(学校歴ではなく学位)関係なく採用されるということですが例年院卒者が多いようです。単純に能力の差かもしれません。
ちなみに科警研に採用後は、科警研に所属しつつ大学院博士課程の学位をとることになります。国費で大学院に通い、キャリアアップさせてもらえる点も非常に魅力的なポイントです。
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