この記事では科学警察研究所(科警研)の法科学第一部の化学系の研究室について紹介します。
科警研には法科学第一部~第四部、犯罪行動科学部、交通科学部の6つの部局があり、それぞれの専門家が犯罪捜査や、その研究を行っています。
この中で法科学第三部には、化学第一研究室~第五研究室まで5つの研究室があります。
化学第一研究室
薬物の乱用は世界的な問題であり、化学第一研究室では各種乱用薬物の、同定方法および生体資料からの高感度分析法の研究開発およびこれを活かした鑑定を行っています。
また、同じ種類の薬物であっても不純物などのわずかな違いから、その流通経路と特定できることがあり、質量分析を用いた薬物プロファイリングも行われています。
化学第二研究室
しばしば、毒物や劇物の食品への混入による中毒事件・事故が問題になり、化学第二部研究室ではこのような毒物の定性・定量分析に関わる研究を行っています。
医薬用外毒物、天然毒、農薬、化学製品、シンナー・エタノールなど、広範な有機・無機毒劇物について、迅速で精度の高い分析方法に関する研究およびこれを用いた鑑定を行っています。
また、質量分析、ラマン分光法などを用いた環境汚染物質の種別識別法の研究開発、食品中の有毒成分や生理活性物質の分析法の研究なども行われています。
化学第三研究室
犯罪現場に残された微細な、繊維や、ガラス片、プラスチック片、金属片などは重要な証拠資料になります。
化学第四研究室ではこれらの、微細形態観察や、元素分析による鑑定法の研究およびこれを用いた鑑定を行っています。
化学第四研究室
土砂や植物はしばしば、犯罪の重要な証拠資料になります。
科学第四研究室では光学顕微鏡、電子顕微鏡、X線などを用いた異同識別、由来する環境推定などに関わる技術開発、鑑定を行っています。
また、植物片のRT-PCRなどを用いたDNA鑑定による異同識別や種別同定の研究が行われています。
さらには各都道府県警の科捜研に対する技術指導も行っています。
化学第五研究室
現代では世界各地でテロの脅威が高まり、日本もその例外ではない。特に化学テロなど社会的影響は大非常に大きいです。またテロではなくとも有毒ガスによる事故も起こり得ます。
万が一そのような事態が発生した場合は、早期にその化学剤や有毒ガスを特定し適切な対処を行っていかなくてはなりません。
化学第五研究室ではサリンなどをはじめとする化学兵器や有毒ガスの質量分析を用いた検出および分析方法の研究、鑑定などを行っています。
採用について
科警研の各研究室の人員募集は、欠員が出た年にのみ行われます。
つまり、毎年すべての研究室が人員募集をしているわけではなく、自分が受験する年に希望の研究室が募集をかけていない場合があります。そのため志望にあたっては複数の研究室を調べいくつか候補を挙げておく必要があります。科警研 生物系研究室についてはこちら
さらに募集があった場合も基本的に採用人数は1名のため採用難易度はかなり高いです。専門性、人物面の充実を図りしっかりと対策を練って官庁訪問に臨みたいですね。
また、採用には学歴(学校歴ではなく学位)関係なく採用されるということですが例年院卒者が多いようです。単純に能力の差かもしれません。
ちなみに科警研に採用後は、科警研に所属しつつ大学院博士課程の学位をとることになります。国費で大学院に通い、キャリアアップさせてもらえる点も非常に魅力的なポイントです。
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