2月1日付の官報にて本年度の国家公務員総合職試験の試験専門委員(専門試験の問題作成者)が発表されました。試験委員は専門試験問題作成(多肢選択・専門記述)に関わります。試験問題は問題作成者の研究内容や専門性に影響を受ける可能性が考えられるため、どんな人が問題を作っているのかを把握することは非常に重要です。この記事では化学・生物・薬学(化生薬)区分の試験専門委員のそれぞれの研究内容、専門性を分析し、出題可能性の高い分野をまとめました。ぜひ有効活用して下さい。
化生薬区分の専門試験では、大卒・院卒試験ともに同一の問題が出題されます。採点後、大卒試験は大卒試験受験者内で順位付けされ、院卒試験は院卒試験受験者内で順位付けされます。
2023年度の試験専門委員一覧(化学・生物・薬学)
国家公務員試験の専門試験では、試験区分ごとの専門家である大学教授や、現役官僚、各研究機関の研究者などが試験問題の作成者として選ばれます。試験問題には問題作成者の専門や、研究内容に関連するものが出題されることが多々あるため、試験専門委員の分析は効果的な試験対策になります。試験専門委員は毎年数人が入れ替わりますが、新しく加わった委員の専門分野は必ず確認しておきましょう。過去の傾向からしても新しく加わった以上何かしらの問題作成を主導する可能性は高いといえます。
以下で化生薬区分の出題分野を「化学」、「生物・薬学」、「食品学・土壌肥料農薬」に分けて試験専門委員をまとめました。ただし、分類などは個人の見解であり、だれがどの科目を担当するかは公表されません。なお、現役省庁職員でデータのない場合は記載していません。自分が選択する予定の科目のを担当しそうな試験専門委員については一度自分でも調べておくとよいでしょう。科研やResarchmap、各大学の研究室のHPなどで、専門性や最近の研究内容が調べられます。
化学
昨年と同様の顔ぶれです。化学に関して詳しい分析はできませんが、試験で化学系の科目を選択する予定の方は一度調べておきましょう。
生物・薬学
生物、薬学系では複数の入れ替わりがあり、個人的には特に明治大学 石丸喜朗教授に注目しています(研究室HPはこちら)。石丸研究室では「脊椎動物の食性と味覚受容体の関連」と「消化管刷子細胞における2型自然免疫と代謝の関連」を二大研究テーマとして扱っていることが紹介されています。研究内容に関連して、食品学で呈味成分に関する出題、生化学や細胞生物学分野でエネルギー代謝、細胞内シグナル伝達の一般論や味覚のシグナル伝達(甘・苦味:GPCR、酸・塩味:イオンチャネルなど)、免疫関連の出題、細胞生物学や生理学の分野で腸管や構成細胞、栄養吸収に関連した出題が予想されます。生物系の科目を選択する予定の方は研究室HPなどで研究内容を必ず確認し関連の分野を学習しておきましょう。
一次試験の専門多肢選択の「細胞生物学・放射線生物学」の放射線生物学に関連して新たに量子科学技術研究開発機構の山崎友照研究員が試験専門委員に加わっています。 山崎友照研究員 について調べてみるとキーワードとして「PET」が頻繁に出てきます。そのため本年度の放射線生物学ではPETを始め、放射線診断・放射線治療に関連した出題が予想されます。
薬学系に関しては東京理科大学 花輪剛久教授が新たに加わっています(研究室HPはこちら)。花輪研究室では主に製剤に関連した研究が行われており、試験では薬剤学、薬化学などで関連の出題があると予想されますので薬学系の受験者の方は確認しておきましょう。
国立環境研究所の横溝裕行研究員の研究課題は「生態リスクの最適管理手法に関する研究」と紹介されており、生態学分野において数理解析などを中心に研究実績があります。公衆衛生学分野で化学物質の生態への影響や、生態学で生物の動態、数理解析的な出題がある可能性があります。
食品学、土壌肥料学・農薬
食品学では上で紹介した石丸教授の専門分野である呈味成分について学習しておきましょう。また東京農業大学の大石祐一教授は何年も試験専門委員を担当しており、過去問の焼き直しで似たような問題が出る可能性があります。実際、食品学のここ10年ほどの過去問を確認すると同じテーマ・題材の出題が何度も見受けられますので過去問を使った学習も効果的と思われます。
土壌系では新しく農業・食品産業技術総合研究機構の草佳那子研究員と林敬子研究員が加わっており、どちらも植物系の研究を行っていることが分かります。これに関連して土壌栄養や病害、植物ホルモンに関した出題が予想されます。
まとめ・出題予想
試験専門委員の専門分野を考慮すると以下のテーマに関連した出題の可能性が高いと思われます。
1.【食品学】呈味成分
2.【生化学、細胞生物学】味覚を中心に細胞内シグナル伝達分野
3.【生化学、生理学】腸管、エネルギー代謝、免疫
4.【放射線生物学】PETをはじめとした放射線診断・放射線治療
5.【薬剤学、薬化学】製剤化
6.【生態学】生物の動態、数理解析
7.【土壌肥料・農薬】土壌栄養、病害、植物ホルモン
※なお本記事の内容はあくまで学習を効率的に進めるための補助であり、まずはまんべんなく基礎知識をつける学習を心掛けてください。
コメント